『日本画』というものに対して普段あまり馴染みのない方はこの言葉に対してどういったイメージをお持ちでしょうか。
おそらく水墨画や浮世絵の様なものを思い浮かべる方が多いのではないかと思います。しかしその認識は正解ではありません。
今の時代において日本画は普段の生活の中では関わる機会が非常に限定的である為に今日では日本人であってもあまり多くの人に正しく認知されていないのが現状です。
では日本画とは本当はどういったものなのかという事を私の考えをもとに少し記していきたいと思います。
日本画という言葉自体は明治の頃に生まれた比較的歴史の浅い言葉になります。
当時東京大学で教鞭をとっていたアーネスト・フェノロサという外国人講師が手記に記した『japanese painting』という言葉が日本画の始まりとされています。
しかしこの当時にフェノロサが示した『日本画』に対する認識は今現在広く使われている日本画の意味するものとは大きく異なっています。
フェノロサが当時日本画としたものは具体的には日本画という言葉が生まれるよりも過去に制作された日本絵画を指したのに対し、今現在広く使われている日本画という言葉はフェノロサによって日本画という言葉が生み出されて以降の日本の絵画に対して用いられております。
また『日本画家』という肩書も明治以降の画家に対してのみ用いられるもので、それ以前の絵師に対して用いる事は本来であれば誤りと言えます。
このような経緯で誕生した『日本画』ですが、その認識が生まれると同時に日本画とそれ以外の表現に対しての明確な線引きが設けられる事が無かった為にその辺りの境界線が非常に曖昧なまま今日まで至ります。それ故に日本画という一つのジャンルに対して様々な解釈が生まれ、同じ日本画という枠の中で非常に多様な表現が試みられ、しばしば制作の現場においても果たしてこれは日本画なのか、日本画とは一体何なのかといった問いが繰り返されてきました。
現在では表現する対象もいわゆる伝統的な花鳥風月を描いた作品ばかりではなく、西洋画に多く見られるような画風の静物画やデコボコしたおうとつのある厚塗りの画面、象抽画など多種多様な表現が見られその表現の方法等は今でも日々変化を続けています。
最後となりましたが日本画に対して抱くイメージは上記の通り人により異なりここで述べた説明は筆者のこれまでの修学経験に基づいた個人的な見解であるということを付け加えておきたいと思います。 学びを進めていく中でしっかりと考えを深めていくことで日本画に対しての自分なりの実像が見えてくる事と思います。